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2008年10月21日 (火)

教育系レポート作成例;発達社会学・子ども虐待の社会的背景について。

出題:子ども虐待の社会的背景を説明し、解決策を具体的に提示しなさい。

 近年、子ども虐待の増加が懸念されている。全国の児童相談所が受けた虐待に関する相談・通告の件数は、統計を取り始めた1990年度の1001件から、2005年度には34297件に増加している。もちろんこれは、あくまで児童相談所に相談・通告があった件数で、それは氷山の一角にすぎず、実際の発生件数はこれをはるかに上回るものだと思われる。
 では、このような子ども虐待にはどのような背景があるのだろうか。衝撃的な虐待の事実が知らされるたびに、その母(父)親自身に原因があり、彼女(彼)らを批判する声が高まる。しかし、子ども虐待は、決して個人的な要因に帰着させることはできない。社会的な背景に目を向ける必要がある。
 現代は、特に母親が子育てに専念することができるケースが多く、一見、育児が困難な時代だとは思われない。しかし、現代ほど、子育てが危機的な時代もそれほど多くはない。
 戦前から戦後初期の段階では、日本の農村共同体はまだ健全であった。親たちは、仕事で忙しかったものの、地域には、子どもたちの異年齢集団が存在し、子ども集団の中で子どもたちは育つことができた。
 しかし、1960年代に入り、高度経済成長期を迎えると、農村共同体は崩壊した。農村では欠かせない労働力だった女性たちも、農村共同体の崩壊で「失業」し、専業主婦となり、子育てに専念するようになった。
 父親は仕事をし、母親は子育てに専念するという性別役割分業が徹底する中で、母親は子育てを行った。「専念」であるからには、子育ての失敗は許されない。そのことが子育て場面において母親を追い詰めていく。
 しかし、このような農村共同体の崩壊や性別役割分業の確立にのみ子ども虐待の社会的背景を求めるのでは、やや不十分なように思われる。もしそうだとしたら、90年代後半以降の子ども虐待の急増を説明できないからだ。
 90年代後半以降の社会の変化として、圧倒的に「中流意識」が強かった社会から、「勝ち組」「負け組」「二極化」といった階層分化が広まったことがあげられる。貧富の差が拡大し、非正規雇用といった不安定就労が増加している。このような生活の背景の変化の中で、日々の生活に追われる家族が急増している。社会で生き残るために大人たちは必死に競争する。このような競争原理の強まりの中で、大人たちが孤立し、地域社会は分断し、家族も子育てにおいて孤立していく。そもそも子育ては、今日のような構成員が少ない家族で背負いきれるような営みではない。それにも関わらず、特に母親に子育ての負担が集中するため、そのことが母親自身を追い詰めていくことになっているのではないだろうか。
 子ども虐待をする親自身が、大きな不安を抱えて生きている。親自身の生活が危機を迎えたときに、それが引き金となって、家族の中の最も弱い存在である子どもに暴力が向けられる。それが子ども虐待の社会的背景なのである。
 このような背景を考慮すると、子ども虐待の解決策としては、長期的には、親自身が安定した生活を送れるよう、現代のような過度の競争社会、階層分化を押しとどめていく必要がある。そして、孤立した親・家族をつないでいくことが求められる。
具体的には、地域社会で、親の生活を支え、子育てを間において親や家族がつながっていくような場づくりが必要なのではないだろうか。現在、保育所などで行われている「子育て支援」の取り組みや、地域子育て支援センターの設置は非常に重要だと思われる。このような場を通じて、親の不安が受け止められ、子育ての悩みを共有する過程で、子育てを共同で行うという意識が高まっていくことによって、子ども虐待を少しでも減らすことができるのではないだろうか。(1526字)


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