教育系レポート作成例;教育心理学・ピアジェの発達段階論について。
教育系大学で出題されるレポートの作成例です。
出題:ピアジェの認知能力を思考の発達段階として、具体例をあげて説明しなさい。
ピアジェによると、思考の発達は生得的に規定されるものでもなく、経験によって獲得されるだけのものでもない。思考の発達は、子どもが環境にはたらきかけ、また環境から働きかけられるという相互交渉を通して行われるという考え方をとる。すなわち子どもは、すでにもっている知識の枠組み(シェマ)に、新しい情報や経験を取り込んでその中で理解しようとする(同化)のだが、そのシェマの中で理解できないときにはシェマの枠組みそのものを変える(調節)という、同化と調節を繰り返すことで発達するとした。
ピアジェによれば、ヒトの思考は、生まれてから14、5歳までに5段階の質的変化を見せるという。それらを順に見ていこう。
① 感覚運動的思考段階(0~2歳)
この段階は、本当の思考に入る前段階と考えられ、象徴・記号・言語を必要としない、使いこなせない段階のことである。感覚器と運動能力との協応を使って、外部環境を認知して、新しい場面に合った行動をしていく段階のことである。例えば乳児は、何でも口に運んでしまう。それは、口唇で得られる情報が、他のどこよりも多いからである。このように、なめる、触る、見るといった感覚器官を通じて外界を知るのである。
② 前操作的思考段階(2~4歳)
この時期は、1)象徴的思考段階と、2)直観的思考段階とに分けられる。
1) 象徴的思考段階
乳児は、母親が見えなくなると泣き出してしまう。これは、単に寂しいといった感情なのではなく、母親がこの世からいなくなってしまったと思ってしまうからである。しかし、象徴的思考段階に入ると、目の前にいないものを思い浮かべることができるようになる。具体的な物だけでなく、その代わりとなる象徴・記号・言葉などが使えるようになってくる思考であり、記憶・推理が可能になることから、ままごと遊びができるようになる。
2) 直観的思考段階(4~6、7歳)
知覚の影響、見た感じ・聞こえた感じ・触った感じなど、によって思考がコントロールされる時期である。思考が直観(見た目)によって左右され、その背後にある本質まで考えが及ばない時期である。例えば、ピアジェが行った「液量保存の実験」では、コップの液量について、同じコップに同じ量の液体が入っていれば、確かに同じ量だと分かるのであるが、細いコップに移すと子どもは混乱してしまい、液体の高さが高くなったのだから量も増えたに違いないといったように、目立つ変化に目を奪われてしまうのである。形は変わっても量は変わらないといった「保存」の概念がまだ成立していないのである。また他にもピアジェは、「対応の実験」「空間理解の実験」等を行い、幼児期の直観的思考は、すべてが自分の知覚に影響されていること、自分の立場でしか物事が判断できないという「自己中心的な思考」になっていることを示している。
③ 具体的操作段階(6、7~11、12歳)
この段階では、先ほどの例でいえば、見た目は変わっても水の量は買わないことがわかるようになり、保存の概念が獲得される。すなわち、具体的事物の助けがあれば、直観(見た目)に左右されずに、ものを把握できるようになる。保存概念ができあがる年齢は種類によって異なり、物質量の保存の成立が最も早く(8歳)、重さの保存が続き(9歳)、体積の保存の成立が最も遅い(11歳)とされている。
④ 形式的操作段階(11、12~14、15歳)
これまで述べてきたように、児童期までの知的操作は、認知や記憶が中心で、思考は具体物をとおしての因果関係は初歩的論理の体系の理解にとどまっていた。しかし、形式的操作段階に至ると、具体世界から自由になって抽象概念を操作し、可能性の世界に対しても論理を適用し、思考できるようになる。この段階においては、①頭の中で2つ以上のカテゴリー(命題、変数、条件など)を同時に扱う、②将来おきるであろう変化をとらえ、その結果を論理的に予測する、③行為の結果を思い描いて現在とるべき行動を選択する、④一連の事柄の論理的可否や一貫性を把握する、といったことができるようになる。このような知的操作の発達は、抽象的思考を可能にするだけでなく、思考と動機、意欲を結びつけて行動できるような原動力となっていく。
以上、ピアジェの認知能力を思考の発達段階として捉え、概説した。
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